| キノコの薬効(2/2) 金沢大学薬学部 太田富久 近年、がんの死亡率が高まっている理由として高齢化が言われているが、、それだけでは説明がつかない。 がんの部位別の5年生存率を見るに治癒が高い確率で可能ながんもある状況である。 しかし、免疫療法・遺伝治療はいまだ緒についたばかりで、課題を抱えている。 例えばC型肝炎にインターフェロンγが夢の特効薬として騒がれたが副作用が強く、期待されたほど効果が上っていない。 抗がん剤のタキソテールを投与した金沢大学の試験結果では、投与と白血球の減少に相関関係が顕著であることが明白であった。 結論を先に言うようになるが、担子菌類を副作用無しに使っていけば有効かつ魅力的であり、また多くの問題が解決できるのではないかと考えている。 漢方での考え方であるが、神農本草経には上中下の薬の分類がある。 上薬には赤芝・黒芝ーーー茯苓などがある。中薬に猪苓・桑耳などがあり、メシマコブがこの桑耳に当たるとも言われているが、遺伝子解析の最近の学説によれば、近縁の同族種との区別はあいまいであったらしい。 世界には多くの食用きのこがあり、生物の多様性を示している。 薬用としても期待できるきのこは多く、各種のがんに対してどれが優れているかの検討も今後の課題である。 今日まで私はきのこの研究を続けてきたが、ニセクロハツタケでは抗腫瘍活性は非常に高かったが副作用が強いので開発を断念した。 がん研究所の友人は今更きのこと言っているが、実際にきのこが利いている人もいる。 シゾフィラン・レンチナン・クレスチンは当初の期待ほど効果が上っていないが、これは多糖類を精製してしまったためではないかと思われる。 そこで多糖類であるが、構造多糖は細胞壁や甲羅にありセルロースやキチンがある。 貯蔵多糖としてデンプン・グリコーゲンなど、そして第3番目がきのこの多糖類である。 β1-3グルカンがアガリスクなど、β1-4グルカンがクレスチン・カワラタケなどで、タンパク多糖体にエノキタケなどがある。 巷間βグルカンが入っているから効くと言われるがそうだろうか。 私の研究では純粋に取り出したβ1-3グルカンは全く効かなかった。 経口で効かなければ健康食品には不向きである。 βーDグルカンの化学構造で1-3はグルコシド結合といい、1-3,1-4あるいは1-6結合によって、ラセン構造やリニアな構造をとるが、結合の長さや構造には絶対的な基準は無く、ペプチドの形によっても効果が違ってくるようである。 多くの研究がある中で、改めてキノコの抗腫瘍作用を研究しようと考えた目的は、非常に高いがん細胞増殖阻害率を示したという、30年前の日本の国立がんセンターによる論文があるにもかかわらず、その後の報告例が少なかったことと、最近、韓国で医薬品として開発されたが、韓国での研究の食菌中心が腹腔内投与であったことから、経口投与実験による腸管免疫の検討が必要と考えたからである。 サルコーマ180を移植したマウスにキノコ成分を経口投与して調べた結果、数種のキノコの熱水抽出エキスに腫瘍の増殖抑制作用が認められた。 メシマコブからはB細胞を活性化させて抗体産生能を高める成分として、酸性ヘテロマンナン−タンパク複合体が得られている。 キノコ成分の免疫作用への寄与はヌード・マウスを用いて実験した。 ヌード・マウスは、胸腺が無いからT細胞が働かず、T細胞による寄与が分るが、この実験でメシマがT細胞に作用していることが分った。 ただし、直接なのか間接的にT細胞に作用する物質に働くかは今後の研究課題である。 マクロファージやNK細胞にもキノコの成分が働いていることがわかった。 韓国の兪益東博士はB16F10メラノーマをマウスに移植、メシマコブの単用とアドレアマイシンとの併用で腹腔投与したところ、シャープな結果を得ている。径口ではなかなかそこまでの切れ味が出ないが、私たちの試験でネズミの元気が変らなかったことは、人間でも活発さを持続できることを意味し、メシマの大きな特徴と考えられる。 がん細胞は、ニセの抗原提示をして自分を守っているが、これにもきのこが有効と言う説を言われる先生も出てきている。 Th1/Th2のバランスにも役立っている。 その結果としてキノコの成分が糖尿病にも効果があると言う試験結果も出ている。 Th2優位になるとアトピーやアレルギーになることもこれによって良い結果が得られると思われる。 一般に生活習慣病は免疫系に関与していると思われるが実験の裏付けをしていきたい。 神経系・内分泌系・免疫系はトライアングルを作っている。 ストレスで糖尿病になることなどは、神経・精神面が内分泌系・免疫系に影響を与える好例である。 食物だけで健康を考えがちであるが、生活を変えていくことが必要である。 生体防御全般に対して、食物は30%の寄与に過ぎないとも言われている。 東北の住人には、お目にかかることのない金沢の新聞ですが、金沢大学薬学部の太田富久先生が標題のメカニズムを解明したという、気になる記事を紹介します。 |

