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中国で人気の「 白霊磨@」について
木村栄一
中国におけるきのこの栽培状況を視察する機会に恵まれ、中国で今最も人気のきのこである
「白霊磨iバイリングー)」を食する機会を得たことから、日本ではまだ馴染みのない「白霊磨v
なるきのこについて述べてみたい。中国の説明書によれば、原産地は中国新彊ウイグル自治
区の天山山脈の高地で、天然のものは極めて希少であり、今では幻の美味しいきのこになっ
てしまっているということである。
形状的には日本でも最近栽培されるようになったエリンギに似ているが、日本のエリンギとは異
なり菌柄がほとんどなく、傘だけの形状をしている(写真1)。栽培ものはあたかもエリンギの
奇形子実体(写真2)といった感じであるが、肉質のきめの細かさや歯触りが良く、しかもエリ
ンギ独特の臭いも無いことから、正しく大変に美味しいきのこである。既に日本にも一部輸出し
ているとのことなので、或いは食された経験をお持ちの方もあるかもしれない。現在年間500
t程度栽培されており(写真3)、アメリカ、香港、台湾などの一流レストランで使用されてい
るとのことだ。
食味的には大変に魅力のあるニュータイプのきのこの「バイリングー」ではあるが、実は分類
学上は極めて混沌としており、まだはっきりとした同定がなされていないきのこといっても過言
ではない。もともとPleurotus eryngiiの仲間のきのこではあるが、この「エリンギ」なるきのこ
には分類学上3つの仲間があるとされている。「バイリングー」はP.eryngiiの変種である
P.nebrodensisだと言われており(他に寄主植物の種を異にするP.ferulaがある)、名前の由
来はイタリア・シシリア島のNEBRODI山系に由来すると言われている。これらエリンギの亜種
(変種)3種については、筆者の調査した範囲においては学者により分類がまちまちで、スイス
のきのこ図鑑(Fungi of Switzerland 3)では同じ種とみており、ドイツのきのこ図鑑
(Pilzkompendium)においては異なる種とみている。そもそもP.nebrodensisなるきのこは、イ
タリアのINZENGAによりP.eryngiiとは別種のきのことして記載され、また、ヒラタケ属の分類
の権威であるドイツのHILBERによれば、寄主植物の種類によりP.eryngii、P.nebrodensis、
P.ferulaの3種に区分され、この3種が和合性の検定により異なる種であることが証明されて
いる。これら3種のきのこは現在でも分類が極めて混沌としている訳であるが、いずれ遺伝的レ
ベルでの解析がなされ、分類学上の決着が付く時が来るものと思われる。(分類学上の真偽の
程はともかく、中国大型真菌原色図鑑においては、これら3種のきのこを明確に区別している
。)筆者の現物を見ての外観上からの独断と偏見による形態的特性から判断した結果において
は、やはりエリンギと別種のきのこではないかと考えている(現在交配試験を実施中)。
分類学上の問題はさておき、大変に美味なきのこであることから、筆者としてはいつもの悪
い癖がつい出てしまい、人工栽培化に向けた研究を始めてしまうのである。エリンギの仲間の
きのこであることから、簡単に人工栽培が可能かと思いきや、あに図らんやなかなかの曲者で
、それが思い通りには行かない。通常エリンギは約30日間の培養日数で発生が可能となる
が、バイリングーはなかなかそうは上手く行かない。色々培養日数や培地組成などを検討中
であるが、残念ながら日本で栽培されたバイリングーにはまだお目にかかっていない。バイリ
ングーはなかなかの難物で、一筋縄では行かないきのこのようだが、中国で味わったあの感
動を日本の皆さんにも一日でも早く味わって頂きたいと思っていることから、人工栽培化に向け
た研究を今後も継続して行く予定である。
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